第5回
1つではない
メニューの1つに20ステップスというのがあります。
前や横への片足・両足ジャンプをしながら、いくつかの数を足し合わせて20を目指すメニューです。 これは今年、小学校2年生になったある子の発案をもとにメニュー化したものです。巣鴨・パトスタジオでは3週に1度は行う定番となりました。参加のみんなにも人気のメニューです。
昨日のクラスの直後、見学していたお父さんから「これはちょっと難しいのでは?」と言われました。
はい、確かに難しいです。
他のメニューはすらすらこなす、クラス参加3年目のベテラン小学生でもこのメニューは手こずることがあります。目の前に広がる多くの数字を前に、少し困った顔をして立ち止まることも少なくありません。
このメニューは今年2月の心理学の学会ワークショップでも議論を呼びました。他とはちょっと趣の異なるメニューです。原案はわたし(サワ)ではなく当時小1の柔術選手によるものですが、わたしもとても気に入っています。
数楽たいそうの他のメニューは、与えられた問いに対して1つのもっともよい答え(最適解)があります。一方で20ステップスは最適解が1つではなく、無数にあるのですね。なので、1つの答えに向かってまっしぐら、とはいかず、彼・彼女らはたびたび立ち尽くしているのだと思います。考えることが1つ多い、というか、1つのジャンプのたびにもう1度考えなくてはいけない、というか。
「数学は1つの答えがある」とよく言われますね。でもこれは誤解だと思っています。学校で習う算数・数学では1つの答えがあるような問いのみを扱っているだけではないかなと。
ふだんの生活では、複数の答えがあるような問いも多いです。一方、同じ答えに至る問いはいくらでもある、こちらは当たり前ですかね。ふつうの算数や数学は問いやすい・答えやすいように理想化、単純化されたものなのでしょう。そして、20ステップスでもそうであるように、問いと答えをつなぐ過程も1つではありません。
点(問い)から点(答え)をつなぐ1本の細い線(過程)でなく、最初から最後まで太さをもつ土管。問題を解決するということはこの土管の中を進むようなことなんだ、そんな感覚を持ってくれるといいな、と、床に並べられたたくさんの数字を前にいつもわたしは感じています。
[サワ]